
今日は、児童養護施設出身のYさんと喫茶店でミーティングしました。
Yさんはいまある印刷会社の営業マン。先日、たまたまFathering Japanでその会社に仕事を発注したときに出会いました。
「実は私、施設を出てまして…。タイガーマスク基金のことは前から気になってたんです。何か自分でもお手伝いできることはないか、って」
聴けば、彼は両親の離婚後に母子家庭で暮らしていたが、小学校のときに母親が精神疾患になり、育児ができなくなって施設に預けられたそうだ。
そして中学生になったとき、ぼんやりと「自分の将来」について考えたときに、どうしていいか分からない。身近な施設の先輩たちの話はどうもピンと来ない。周囲にはお手本となるような自立モデルが見当たらなかったそうだ。
そこで少年は考えた。
「とりあえず普通のサラリーマンになろう!」と。
そして商業高校で学び18歳で施設を退所後、すぐに印刷の会社に就職し、まじめに仕事に取り組んできたそうだ。
それから数年後に、いまの奥さんと出会い結婚。子どもは現在、3年生&5歳&1歳。
別れた父親と一緒に暮らしていた6歳上のお兄さんもいるそうで、今ではときどき電話で話すそうだ。貧しかった家にいたお兄さんは中卒で仕事で苦労したそうだが、いまでは家庭を持って、彼と同じように3児の父親とのこと。
お互いの近況報告の後、いつも電話の最後でお兄さんが彼にこう言うそうだ。
「いいか。親のようになっちゃダメだ。俺たちは自分の子どもをきちんと育てような。親と同じことを繰り返しちゃいけないんだ!」
彼もそれをずっと思い続け、肝に銘じて、ここまでやってきたそうだ。
社会的養護のことについてYさんは、
「子どもを育て上げ、会社を定年になったら、養護のことでボランティアでもやろうと思っていた。でもそれからでは遅い気がする。今、施設で暮す子どもたち。僕と同じように悩んでいる子たちのために何かしたいんです」
と、熱く語ってくれました。
少し話し合って、彼には施設の子どもたちへのキャリア教育プログラムを手伝ってもらうことにしました。対象年齢は、彼の実体験から「小学校高学年」くらいからが良いようです。
でも僕は、「タイガーのサポーターに手を挙げてくれるのはうれしい。でもYさんところははまだ子どもが小さいので大変だと思うから無理はしないで欲しい。本当にできることだけ、やれるときだけでいいですからね」と伝えました。Yさんは、こっくり頷きました。
「安藤さん。夏休みは上の子二人とキャンプに行くんですよ!」
ミーティングを終え、彼は笑顔で僕にこう言った。
それは、これまでいろいろあったけど、いまの自分の人生を肯定して生きている、優しくて、強くて、
かっこいいパパの顔だった

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